ウキ Floats

 

 ウキは、浮子(あば)とも言って、錘(おもり)とともに網漁で使う魚網を建てる道具です。古くは木材で作られてきましたが、漁業の近代化とともに、ガラス、金属、そして最近ではプラスチック製品が多用されるようになりました。

 ここではウキだけではなく、漁業関連の道具をまとめて紹介します。

 

 ウキや漁業関連のものは、ウキウキ事典にも紹介してあります。

 ガラス玉に関しては、Beachcombing for Japanese Glass Floatsにも紹介してあります。

 


 ガラス玉

 

 かっては北洋漁業で大量に使われていたガラス玉だが、プラスチック製の浮き玉に押されて、しばらくは生産されていませんでした。小樽の浅原ガラスの浅原宰一郎さんが先代の遺志を継ぎ、2007年から日本でガラス玉を再び製造をはじめられました。漂着するガラス玉は、かって大量に作られた国産のものと、韓国製、中国製がほとんどです。 国産のものには「北」・北洋ガラス、「川口」・川口ガラスなどメーカーの印がありますが、無銘のものも多くあります。韓国のガラス玉には、ハングルによる印があり、3種類の印が確認されています。

 

緑玉


 本州中部地方に漂着するガラス玉で、およそ尺玉サイズは、ほぼこの緑玉でしょう。以前は台湾の緑玉と言っていましたが、中国で昆布養殖に使われているものと分かりました。

 緑玉の特徴は上下二つの輪にしたロープをジグザグに結わえた網がけと、凹んだへそ、それに極めて薄いガラス厚です。ものによっては2ミリほどの厚さしかない部分もあり、割れやすいのです。

パンプキン


 本州中部地方に漂着するガラス玉で、パンプキン(かぼちゃ玉)と呼ばれるタイプのガラス玉があります。その特徴は、球形のものではなく、球がつぶれた、まさにカボチャの格好をしていることです。

 この浮き玉を作っていたのはどこか分かっていませんが、型など無く、日本の浮き玉メーカーが使っていた「リン」と呼ばれる半球の型を使った形跡も無い、乱暴に吹かれたものです。最近では見ていません。

シリンダーウキ


 ガラスで出来た浮きの中では数は多くなく、中部地方の浜辺で拾うのは極めて稀。中部地方ではこれまでに、田原市の表浜海岸と、福井市三里浜砂丘で拾っています。

 シリンダーウキは大きく二つに分けられ、写真手前が北海道型で北海道を中心に作られたものです。写真奥の紡錘状のものは東北型で、東北で作られた。どちらも金型に入れて吹いて作られます。

 

ソ連で使われたアメリカ製のウキ

 

 第二次世界大戦中、連合国側の物資貸与協定にもとづき、アメリカのノースウエスタングラスで作られたウキが、シアトルを船出しウラジオストックに向かいました。そのウキはソ連で蟹漁に使われました。数十年後の2014年、石川県南部に一つ漂着しました。まだ世界の海上でプカプカ彷徨っているかもしれません。


 ヘソのマーク ・ シーリングボタン


 浮き玉を吹いて、吹き口を別のガラスで押さえ栓をしますが、このとき栓にしたガラスのパッチが柔らかいうちにマークをつけることがあります。マークは製造会社や、船団のようです。

 左上から時計回りで、○に「は」・太陽漁業、北・北洋ガラス、須・不明、シ・不明、ここまでが日本製の浮き玉、次の二つは韓国製で、ハングルのスタンプが押してあります。

アルミウキ


 ウキの素材は、木や、ガラス、プラスチックだけではありません。強度を求めて金属製のウキも作られています。

 これまで見たことのある金属製のウキでは、アルミ、鉄(錆びて全体が腐食し赤茶けていた)、亜鉛、ステンレスがありました。

 写真はソ連のアルミ製ウキで、半球型にしたアルミを接いで球を作り、上部には二つの耳を取り付けたものです。

スチールウキ

 

 ウキの素材は、木や、ガラス、プラスチックだけではありません。強度を求めて金属製のウキも作られています。

 これまで見たことのある金属製のウキでは、アルミ、鉄(錆びて全体が腐食し赤茶けていた)、亜鉛、ステンレスがありました。

 写真はソ連のスチール製ウキで、半球型にした鉄材を接いで球を作り、上部には二つの耳を線材で取り付けたものです。

白樺ウキ 

 

 日本海側の海岸を歩くと、くるくる撒いた10~20cmほどの樹皮がいくつも見つかります。これは白樺の樹皮で、樹皮を剥くと、反対にひっくり返って丸まります。実はこれがウキで、角になる部分が面取りしてあるものも多くあります。この浮きは綱(浮子綱)を通して、魚網と一緒に使われています。先日これと一緒にスチレンボールにハングルが記されているのを見つけました。韓国から北朝鮮のハングル圏では使用されているようです。

アベマキ樹皮のウキ 


 樹皮を使ったウキは、白樺ウキがよく見つかりますが、注意して軽いものの打ち上げられるラインに沿って歩いていると、アベマキの樹皮が見つかります。

アベマキ Quercus variabilis は台湾、中国、日本の西部に分布するブナ科の植物で、樹皮にはコルク質が発達します。かってはこれをウキによく使っていたようですが、最近では漂着は少なくなっています。

木製の刺し網ウキ 漆浮子(うるしあば)

 

 プラスチック製の浮きが普及する前、刺し網のウキや錘は漁師さんによる自家製のものでした。もう今ではほとんど見られない絶滅危惧種です。 このウキは漆の木が使われ、乾燥すると非常に軽くて浮力が高く、また加工もしやすく、水に強いことから用いられました。漆は材の中央が空洞になりやすいのですが、ここに綱を通すことはなく、両端の刻みで結わえられました。

 

プラスチックウキ


 大量生産されるプラスチック製品の普及によって、それまで木製だった刺し網に使われるウキもプラスチック製となりました。中空のプラスチックウキは一体成型のものもあれば、ABS樹脂を2枚張り合わせたものもあります。

 写真は中国製のプラスチックウキで、右端が「オレンジウキ」などに代表される2枚合わせで、その他は一体成型にて作られたものです。

 ウキに関しては、プカプカ通信に詳しく載っています。

小さなモノから、大きなモノまで・・・

 

 ABS樹脂を2枚張り合わせた「オレンジウキ」には、さまざまなサイズがあります。こんなに小さなモノでも使えるのか?と思うほど浮力の低いモノから、その10倍ほどの浮力の高いものまであります。

 オレンジウキと呼んでいますが、色はオレンジだけではなくブルー、イエロー、メロングリーンなど様々、表面の陽刻もたくさんのデザインがあります。

ベトナムのキャンディーウキ


 ベトナム製の刺し網用ウキは、その形状とビビッドな色合いと相まって、キャンディーウキとも言われています。

 キャンディーウキの色には赤、黄、緑、青などが知られ、それがエージングによって微妙な色彩に変化してきます。

 写真中央のキャンディーウキは、近年漂着が確認されている2色のもので、張り合わせです。他の二つは一体成型で作られています。

ブルー豆型ウキ

 

 中国製のウキで、マメのような形をしています。ウキには二つの穴が設けられ、そこで浮子綱(あばづな)と結わえて使います。実際の漁では写真のウキが天地逆になって網を建てます。

 写真は二つの穴の間隔が狭いタイプ。穴の間隔が広がるタイプもあり、表面には錨や魚の陽刻が施してあります。

ブルー分銅型ウキ

 

 水色の一体成型によって作られた分銅型をしたプラウキです。

 先端の部分には耳があり、底の穴にテグスなどを通し、浮子綱に結わえて使うため、実際の漁では写真のウキが天地逆になって網を建てます。北海道の「のらさん」は、このウキにペイントを施して人形に加工して楽しまれています。

ブルー筏型ウキ

 

 長さが10㎝程の一体成型ウキで、素材のプラスチックは水色だが、エージングすると緑っぽくなったりする。

 作られていた時代はちょっと前のようで、新しい製品の漂着は見ていません。両端に刻みがあり、底の部分で浮子綱にテグスなどで結わえて使う。大きさも小さく、浮力は弱いため、刺し網に使うものでしょう。

ベトナムのボートフェンダー

 

 小型船舶の側面に吊るし、岸壁に接岸したり、他の船舶と接触したりするときに衝撃を吸収する緩衝材として用いられるボートフェンダーです。アメリカ製ではポリフォームと言う高品質のものがあります。

 写真のものはベトナム製でチープな作り。これは大きいほうでこれよりも短いタイプもあります。色は白色が多いが、他にも赤があり、紅白のボートフェンダーが揃うと、なんだか縁起が良いイメージとなります。

 

PET素材のボートフェンダー

 

 製造国は、中部地方では2020年秋ごろから漂着が始まりました。 赤色のPET素材で非常に軽く目立ちます。 フェンダー内部にはガスが充填してあり、上に私が乗っても凹む様子もない丈夫なモノですが、ガスが抜けたらひとたまりもありません。


ぼんてん

 

 ぼんてんとは、海に張った建網や刺し網の、位置を明確にするための目印です。ぼんてんのほとんどは、漁師さんによる手作りで、2~4mほどの竹竿に、錘、浮力体、目印の旗や点滅するライトなどを組み合わせたものです。

 写真は福井県美浜町の水晶浜に打ち上げられたもので、錘にはセメント、浮力体には発泡スチレン、旗には養生シートが使ってありました。

ぼんてんライト

 

 ぼんてんの先には旗をつるして目印にしますが、薄暗い早朝などにより目立たせるためにライトを結わえつけます。

 このライトは単一電池を使い、ランプ部分には発光ダイオードを用いています。また省電力のために点滅だけではなく、最近では明るさに応じて点灯するセンサーライトになっています。最初にセンサーライトを拾ったとき、後部座席に放り込んでおいたら、走行中に点滅し始めたので驚きました。(笑)

スチレンフロート

 

 写真のフロートは、ドラム缶サイズでしたが、もっと大きなものからビア樽ほどのサイズまで見られます。素材は円筒形の発泡スチレン(スチロール)を、オレンジ色の養生シートで包み、その上からロープがかけてあり、浮力は非常に高いものです。養生シートの表面にはハングルがプリントされていたり、書かれており、韓国で作られ、使われているものです。またこれは中~小型船舶のフェンダーとしても使われています。

垢くみ (あかくみ)


 これは舟に溜まった海水をくみ上げるために使われるものだが、漁船によっては、取れた小魚を移したりするのにも使われました。

 以前は一本の木を刳りぬいて作った工芸品のような垢くみもあったようですが、板材を組み合わせたものになり、現在ではプラスチック製品に取って代わられました。韓国や中国などでは、不要になったポリタンクをリサイクルして、手作りの垢くみが作られることもあります。

集魚灯

 

 イカ釣りなど、夜間に獲物を船近くへ引き寄せるために点けられるランプです。イカ釣り漁船などはこうした集魚灯をイッパイ点けて漁を行うため、山陰などの日本海側ではランプが一直線につながって、「日本海にかける橋」といった趣になります。切れたランプは捨てられることが多く、冬の日本海側では普通に見られます。ランプのガラスは硬質で、割れると後始末が大変なので持ち帰るのはオススメしません。

ウケと、返し

 

 ウケとは、筒状の漁具で、その中に餌を入れ、魚が入ったらもう出られない仕組みとなっています。写真は韓国のアナゴ用のウケで、円錐型をした「返し」を底からはめて、餌や魚の取り出しを行います。「返し」は大量に漂着し、風に押され高い砂丘も登りきるほどです。


  網針(あんばり・あばり)


 漁師さんらが、魚網を編むときや、補修の際に用いる針で、この形は古くから完成されており、1000年以上の歴史があるものです。また日本だけではなく外国でも、ほぼこの形が基本になっています。

 写真は福井県に漂着した韓国製の網針である。中央の軸にある突起は、もっと小さな網針では金属製になっています。日本の漁村では、お爺さんが竹製の手作り網針で網の補修をしているのを見たことがあります。

 この2枚の写真は漂着物ではありません。

 

 愛知県知多市の民俗資料館に展示されている竹製のあんばりです。韓国製のプラ製品と同じ形なのがわかります。

 また左端の写真は、あんばりを入れておくためのケースです。


シイラ漬け漁の筏

 

 シイラ漬け漁とは、海面の浮遊物に集まるシイラの習性を利用して、漬け木と言われる筏に寄ってくるシイラを巻き網や釣りあげる漁法です。この漬け木には、10mほどの孟宗竹を束ね、その上に目印となる木の枝を立てます。筏には沈める水深の1.5倍ほどのロープを結わえ、土嚢をその先に巻きつけて錘にします。

 この漁については、鳥取県水産研究所のサイトに詳しく載っています

浮き球▽ベースボール公式球

 

 作家の椎名誠さんが広めるのに一役買ったといわれている浮き球▽ベースボールは、沖縄や奄美といった南方の島で始まったようです。このゲームにはちゃんと公式ルールがあります。始まりはソフトボールサイズの発泡スチレンよりもやや硬めの貫通ウキを、奄美大島あたりの人たちが流木のバットでパッコ~ンと打って遊んでいたあたりのようです。ただ、このボール、南方以外ではあまり漂着していないようです。見つけたら大事にとっておかなきゃ!(笑)