海岸植物 Plants of Sea-side

 いつも波の打ち寄せる海岸では、高潮線のある前浜までは波に洗われています。そして大荒れの暴浪が寄せる後浜あたりまでは海水の影響を強く受けています。暴浪が届く後浜の陸寄りには、砂の高まりがあり浜堤と呼ばれています。

 海岸植物が繁茂してくるのは、この浜堤あたりから、その後ろに広がる砂丘にかけての一帯で、春には海岸植物が次々に開花して、美しいお花畑を作り上げます。そんな海岸植物の一部を、大凡の開花時期にそって紹介しましょう。

ハマダイコン Raphanus sativus

 ハマダイコンは春になって最初に目立つ海岸植物の花でしょう。3月末から4月はじめに花が咲き始めるので、その時季に浜へ行くと、春が来たなぁ~!と感じます。

 かっては大根が野生化したものといわれていましたが、そうではなく大陸から伝わった野生種と見られるようになってきました。

 福井と愛知で普通に見られます。


コウボウムギ  Carex kobomugi

 

 達筆で知られた弘法さまが、この植物の根を筆代わりにしたという逸話から名づけられました。

 雌雄異株で、群生地でも、雌雄が混在することは多くなく、それぞれが群生しあって、大きな群落を作り上げます。 福井と愛知で普通に見られます。


コウボウシバ  Carex pumila

 

 コウボウシバは海岸の砂浜から砂丘にかけてに生えるスゲ属の多年草で、同じような場所に生えるコウボウムギよりも小さいので、この名前がつけられました。

 左の写真は果期のコウボウシバで、上にある茶色い釣竿のようなものが雄小穂、下にあるのが雌小穂です。

ハマニガナ  Ixeris repens

 

 ハマニガナは海岸の砂浜から砂丘にかけてに生える多年草で、対塩性が強くて他の植物が生えない場所を選んでいるように思えます。

 またハマニガナも他の海岸植物同様に種子が海流に乗って散布され、日本だけではなくベトナムや中国、ロシアあたりまでの広い分布域をもっています。

 花期は非常に長く、4月頃から11月頃まで開花が見られることもあります。

 福井と愛知で普通に見られます。

ツルナ  Tetragonia tetragoniodes

 

 渥美半島の表浜(太平洋側)では、砂浜の奥や砂丘辺縁部で見られます。日本海側では見たことがありません。

 茎は分岐し、地を這い、葉は互生し肉厚の葉をつける。

 黄色の花の花期は長く、4月頃から11月ごろまで見られることがあります。ツルナは古くから食用になることが知られているが、キャプテン・クックがニュージーランドから持ち帰り、イギリスでも栽培されたそうです。

ハマハタザオ  Arabis stelleri


 浜辺の砂地や砂丘に生える浜旗竿の名前の通り、背が高くすっくと伸びた茎と白い花の目立つ植物で、背の高いものは50cmを超えるほどにも伸びます。

 福井県では越前、若狭のどちらにも見られ、左の写真は美浜町の松原海岸の個体です。右側の写真は、福井市三里浜砂丘に群生したハマハタザオです。こうした砂丘に分布する植物は、盛りのピークがはっきりしており、タイミングが良いと思いがけない美しさに出会えます。



スナビキソウ  Messerschmidia sibirica

 

 5月頃になると、若狭の浜では白いスナビキソウの花があちこちで見られます。

 スナビキソウの名は、長い地下茎からきていて、砂を引くように長く連なったところから名づけられたのでしょう。

 スナビキソウの花は独特な香りがあり、それが蝶を惹きつけるようで、アサギマダラの雄が春の渡り時期にこの花に群れるのはよく知られています。アサギマダラのほかにもアオスジアゲハが群れているのを見ました。


 スナビキソウに集まるアサギマダラは、後翅に黒い班のある雄がほとんどのようです。ここでは花に寄った写真しかありませんが、花だけではなく、茎や葉に寄っていたアサギマダラもいました。


イソスミレ Viola grayi

 

  海岸の砂丘に地下茎を伸ばして株を作って生えるスミレの仲間で、北陸ではGW前後の短期間に花を咲かせます。

 石川県の塩屋海岸や福井県の三里浜砂丘では、砂丘の北斜面や頂き部分などの高い場所に多く分布しています。


アキグミ Elaeagnus umbellata

 

 海岸沿いにはグミの木がよくあります。中でもアキグミは4月から5月ごろにかけて、白色から淡黄色の鈴なりの花を咲かせます。

 アキグミは砂丘頂上部から後背地にかけての範囲に見られることが多く、秋には真っ赤に熟した実をつけます。この実は食用になりますが、実際に食べてみると、かなり渋くて、そう喰えるものではありませんね。

 

メノマンネングサ  Sedum japonicum 

 

 タイトゴメに似ており、最初は間違えていたのがメノマンネングサだった。福井辺りでは普通に見られる海岸植物です。

 5月のゴールデン・ウィーク辺りから花期が始まり、この時季は根元の紅色から先端の花の黄色までのグラデーションが美しい。


タイトゴメ Sedum oryzifolium

 

 メノマンネングサに似ている。大唐米(たいとこめ)とは小粒な米のことを言い、小さくて分厚い葉を、この米に例えたのが、和名の由来だろう。

 海岸の岩場や舗装道路の隙間などに生える多年草で、背は高くならず地面を這うように伸びる。

 葉は互生して密になり、長さは4~5mmで小さい。また黄色い花を漬けない枝の葉は赤みを帯びることが多い。

ハマヒルガオ  Calystegia soldanella

 

 5月ころから咲き出すハマヒルガオの花は、海岸植物の中でも大群落を作り出します。花期は長いのですが、やはりピークがあり、そんな日に見られると、漂着物の無い日本海側でも、何か一つもうけものをしたような気分にさせてくれる花ですね。

 福井と愛知で普通に見られます。

アメリカネナシカズラ  Cuscuta pentagona

 

 初夏のころ、ハマヒルガオが盛んに花をつける時期に、アメリカネナシカズラも黄色いつるを這わせて大繁殖します。アメリカネナシカズラ、実はヒルガオ科ということで、ハマヒルガオのいる海浜で見かけることが多いのです。

 残念ながら福井と愛知で普通に見られます。


コマツヨイグサ Oenothera laciniata

 

 北米原産の帰化植物のコマツヨイグサは、渥美半島の海岸に定着してしまいました。

 渥美半島ではハマエンドウと一緒に群落を作ると、キレイなお花畑になちゃいます。


ハマエンドウ  Lathyrus japonicus

 

 ハマエンドウもハマヒルガオ同様に広く知られた海岸植物で分布域も広いものです。

 花色のバリエーションも豊富です。

 また花期も長いので、思わぬ時季に咲いていることもあり、渥美半島で1月の開花を見たのには驚きました。

 福井と愛知で普通に見られます。


ケカモノハシ 

Ischaemum anthephoroides


 海岸の砂地に生える多年草で、渥美半島では普通に見られます。

 カモノハシの由来は、この穂の中に小穂があって、その花序が鴨の嘴に似ているところから名づけられたようです。


ハマナス  Rosa rugosa

 

 ハマナスを最初に見たのは道東の根室にある浜辺のお花畑で、真っ白な海霧の中でした。そのイメージを持ち続けていたので、ビーチコーミングで日本海側を歩くようになり、福井や鳥取にまでハマナスが咲いているのには驚きました。

 そんなイメージがあるので、ハマナスは海霧が出たときにでも撮りたいのですが、いまだにお目にかかっていません。

 福井の砂浜で5月頃から見られます。


ハマウツボ  Orobanche coerulescens

 

 5月から6月初旬にかけての短期間に花をつけるハマウツボ科の寄生植物です。

 寄生する相手は、主に白緑色のカワラヨモギで、その地下茎に寄生します。

 ハマウツボは、時折ハマヒルガオやカワラヨモギの群生の中から頭を出しますが、寄生植物のため緑色の葉を持ちません。 渥美半島では田原市の一部、福井県では福井市の一部で開花が見られます。


ハマボッス  Lysimachia mauritiana

 

 花の咲いたときの様子が、僧侶が使う払子(ぼっす)に似ていることから名づけられたと聞きますが、 インドでは払子はハエや蚊などを追い払う道具であったようです。(笑)

 渥美半島では砂丘の上に見られ、まだ飛砂のある時期に開花するために、20cmほどに伸びた茎がかなり砂に埋まり、花の中まで砂が満たされていることもあります。晩秋になり、あたりの植物が倒れてもレンガ色となったハマボッスが立っているのは目立ちます。

 福井と愛知で普通に見られます。

 


ハマウド   Angelica japonica

 

 セリの仲間のハマウドはかなり大きく伸び、時には人の背丈を越える2mほどにも伸びたものを見ることもあります。

 そんなハマウドですが、学名につけられたアンジェリカはかわいいイメージしかないのですが、女子プロレスにそんな名前の人はいませんか?

 最初に見たときは、アシタバ?って思いましたが、花の色が黄色ではなく白でした。

 福井と愛知で普通に見られます。

ハマボウフウ  Glehnia littoralis


 セリの仲間のハマボウフウは一見カリフラワーのような白い花をつけます。その若葉は香り高く、美味なので刺身のツマや、天ぷらにして食べると美味しいので八百屋ボウフウとも言われています。

 福井と愛知で普通に見られます。


トベラ  Pittosporum tobira

 

 名古屋近郊では庭木として知られたトベラは、寒さに強いのであちこちの街路樹にも使われています。

 渥美半島の表浜では、磯の岩の割れ目にも根を張る強い樹木で、赤羽根ロングビーチの東端にあるチャートの岩体の上でも花を咲かせています。果実が熟すと割れて、赤い実を付け、それが鳥に運ばれて、さまざまな場所で発芽し定着するのでしょう。

オカヒジキ  Salsola komarovii

 

 八百屋さんやスーパーの店先に並ぶオカヒジキ、あれの野生に生えたやつです。かなり耐塩性があり、前浜と後浜との境界線あたりにつながるように生えることもあります。

 浜に生えたオカヒジキを齧るとやや塩味を感じます。どうもこれは表面に付着した塩分だけではないようです。 福井と愛知で普通に見られます。

ジャケツイバラ  Caesalpinia decapetala

 

 ジャケツイバラが、海岸植物か?と言われそうですが、シロツブと同じ属ですし、浜の後背地に多いのでご勘弁を!

 シロツブ同様にトゲトゲのこの木は、人が近寄るのを拒んでいます。ちょっと一枚・・・とカメラを近づけたところ、腕に引っかき傷は必至!花はキレイなんですがね。(笑)  福井と愛知で普通に見られます。

ハマナデシコ  Dianthus japonicus

 

 初夏から秋にかけて浜辺の砂浜や崖に近い場所などで花を咲かせます。伊良湖岬付近の崖地には、ハマナデシコが多く、夏に見るとマゼンタ系の色ですが、涼しげな感じもして好きな花です。

 福井と愛知で普通に見られますが、渥美半島のほうが多く咲いているように思います。


ナミキソウ  Scutellaria strigillosa

 

 初夏の浜辺を彩る青紫をした花の咲くシソの仲間です。波の打ち寄せる浜辺近くに咲くことから、波来草と名づけられたものでしょう。

 タツナミソウ同様に二つの花が同じ方向を向いているのがかわいいですね。

 福井と愛知で普通に見られます。


テリハノイバラ  Rosa luciae

 

 初夏に真っ白な花をつけるテリハノイバラは、浜の後背地に広く繁茂しビーチコーマーの行く手をさえぎります。

 秋が深まると真っ赤な実が目立ちますが、美味しいのか鳥に喰われてしまいます。

 福井と愛知で普通に見られます。


ハマゴウ  Vitex rotundifolia

 

 暑くなったころに花を咲かせるハマゴウは、浜辺の清涼剤ですね。ハマゴウの茂みの脇を通るだけで、爽やかな安息酸系の香りがします。その実は蔓荊子(まんけいし)と呼ばれて、漢方薬に使われるようです。種を集めて袋に入れておきましたが、香りは速く失せてしまいました。

  福井と愛知で普通に見られます。


ハマユウ

 

 初夏に花が咲き出す渥美半島ですが、秋には発芽したハマユウのタネが、漂着物の中から見つかります。

 こんなのは、植木鉢の上においておけば、自然に根を張り出して大きくなります。

 我が家では10年ほど育てたハマユウが去年ハマオモトヨウにやられて全滅状態に!、嫌いな虫が、よけい大嫌いになりました。


ハマボウ   Hibiscus hamabo


 日本の中部地方で見られる野生種のハイビスカスです。

 真夏にならないと咲かず、花期もそんなに長くないために、見ようと思っていても、タイミングが合わなければ見逃してしまいます。

 コウボウムギ同様に、和名が種名になった美しい夏の大輪です。

 渥美半島では、豊橋市と田原市で見ることができます。

イワダレソウ  Phyla nodiflora


 イワダレソウは夏から秋にかけ、渥美半島表浜で開花が見られます。砂丘や後背地の砂の上に目立ち、低く地表を這っています。

 花の雰囲気から、ワレモコウに近いのでは?と勝手に決め込んでいましたが、拡大してみるとステキな花をつけていました。渥美半島表浜で見ています。


ハマアザミ  Cirsium maritimum


 夏から初冬にかけての長期間花を咲かせるキク科アザミの仲間です。

 葉には鋭い棘があり、触ると痛いのですが、根は食用となるために浜牛蒡とも言われ、古くから食べられてきました。晩秋になると写真のようにタネができてきます。

福井と愛知で普通に見られます。


ハマナタマメ  Canavalia lineata


 漂着種子が海流散布をするために、種子の発芽は各地にありますが、中部地方では結実まで見届けられるのは少ないでしょう。

 そんな意味でも、渥美半島の伊良湖岬にある株は貴重なものですね。

 マメ科のハマナタマメ、花はピンク色で美しいものです。鞘は秋になると枯れ木質になり、マメが熟すと鞘は捻れるようにして割れ、豆を飛ばします。

 

ハマカンゾウ    Hemerocallis fulva


 渥美半島先端の伊良湖岬にはハマカンゾウの群落があり、夏から秋にかけて、濃いカドミウム・イエローの花を咲かせます。

 ノカンゾウに似ていますが、海岸沿いの崖の上などに自生することから、その名がつけられました。

 また、ノカンゾウに比べて開花時季が遅く、暖かい浜辺に自生することから、冬でも枯れないようです。


ウンラン  Linaria japonica


 海蘭と書くウンランですが、蘭の仲間ではなく、ゴマノハグサの仲間で、夏から初秋にかけ、砂浜の低い位置に花を咲かせます。

 キンギョソウに似た花は、白と黄色の目立つ、なんだかゆで卵のイメージを持った植物でした。

 福井では三里浜砂丘でよく見られます。

ハマベノギク  Heteropappus hispidus


 夏の終わりごろから晩秋にかけて、砂浜や砂丘の上で花開く植物で、群生した花が揃って咲き出すと、それはまた見事なものです。

 特に秋になって淡青紫色の花が少なくなってきた時期には嬉しい色ですね。

 福井と愛知で普通に見られます。


グンバイヒルガオ  Ipomoea pes-caprae


 グンバイヒルガオの発芽は各地で見られますが、太平洋側よりも日本海側に多く、その理由は冬場に大量の漂着物が打ちあがり、その中に小さなグンバイヒルガオのタネが混じっているからでしょう。タネを見つけるのは非常に難しいのですが、発芽すれば特徴的な軍配型の葉をもつので分かりやすいのです。ただ他の植物に比べ発芽時期が遅いので、開花も遅れ、台風時季の暴浪で枯れてしまうことが多いのです。

2014年秋に若狭の浜の芽生えを鉢植えし、2015年秋に庭へ地植えしたところ、2016年9月に4輪開花しました。


ヒレガクアサガオ(仮)   Ipomoea fimbriosepala

 

 ヒレガクアサガオはまだ和名が無く、このほかにもシガクアサガオとも呼ばれています。最も古い記録では、1970年10月に新潟県の粟島で見つかっています。

 近年では福井県下で、発芽や開花が見られ、かなり前から浜辺では咲いていたものではないかと推測できました。

 ヒレガクアサガオの葉は、特徴的な細い矢じり型をしており、開花は9月~10月頃に始まります。


ハマアカザ Atriplex subcordata

 

 北方系のハマアカザ属で、北陸では海岸の砂礫浜に生える一年草です。

 福井県の若狭地方でもオカヒジキの生えるライン上に見られます。

 写真のハマアカザは福井県美浜町で10月初旬に撮影したものです。


ホソバハマアカザ Atriplex gmelinii

 

 海岸の塩生湿地に群生するハマアカザ属。

 葉は細長く、淡い深緑色で、花期は8~10月となり、果期は、ハマアカザよりも遅くなる。

 写真のホソバハマアカザは、9月末に愛知県御津(みと)市の三河湾に面した海岸で撮影したもの。

 このあたり一帯は三河湾の奥に位置しており、周辺ではレジャー施設などの開発が進んでいる。


ハギクソウ   Euphorbia octoradiata

 

 ハギクソウはトウダイグサ科の植物で砂浜の後背地に群生しますが、その分布は限られており、渥美半島でも見られる場所が限られてきました。

 4月ごろ小さな花をつけますが、あまり目立ちません。これが目立つのは冬に入った12月末頃からです。秋にはまだ青々していますが、冬に紅葉し始め、ハイネズの中にあると花が咲いたように鮮やかなスカーレットに色づき、逆光で見ればまるで菊の大輪を見るかのような美しさです。


 ハギクソウの花は、年にもよりますが、暖かければ3月下旬頃から開花します。そのために真っ赤に紅葉した葉っぱの残っている中で、黄色い花が咲く場面を見ることもあります。

  放射状に開出した散形枝の中心には、中心の杯状花序を1個つけ(左写真参照)、葉腋から出た5本の散形枝には、それぞれ杯状花序がつきます。


アマモ  Zostera marina  コアマモ Zostera japonica

 

 アマモとコアマモは浅い海中に分布する海草です。雌雄同株で多年生の顕花植物で、胞子で増える藻類ではなく、海中に生える種子植物です。

 渥美半島の表浜海岸では東にある浜名湖から沿岸流に乗って届いたものが漂着しています。アマモは晩春から漂着しますが、コアマモは初夏あたりから漂着します。

アマモの花は、5月の連休ころから花が咲きます。アマモの花は蕾 → 雌花開花 → 雌花収納 → 雄花開花 → 花粉放出・・・という開花順序があり、一つの雌花と 二つの雄花で一組になったものです。