脊椎動物 Vertebrate


 ビーチコーミングで出会う脊椎動物には、海に棲む魚類、哺乳類、爬虫類だけではなく、陸に棲む哺乳類、鳥類など様々なものがありますし、ペットの漂着もあります。

 動物の死体が漂着していることもあれば、死んだ動物が他の捕食動物に食べられたり、微生物に分解されて骨だけになって漂着することも珍しくありません。

 骨の漂着から、元の動物を探すのはパズルのようで楽しいのですが、慣れないと難しいものです。慣れないうちは骨の形状をよく観察しましょう。見つけた骨が左右対称ならば、体の真ん中にある椎骨や頭骨です。腕や手、それにアシの骨や肋骨は、左右非対称の形をしています。



アカウミガメ Caretta caretta

 

 アカウミガメは日本でも繁殖することの知られたウミガメで、私がフィールドにしている渥美半島でも毎年繁殖のために上陸してきます。

 上陸する時期は初夏から夏にかけてですが、漁船などとの接触などで傷ついたり溺死して命を落とした個体が毎年漂着します。

 アカウミガメの漂着を知るのは、目視よりも鼻がたより。死んで漂着したウミガメは夏の暑さで腐敗が進み、強烈な臭いを放ちます。風下にいれば200mほど離れていても分かりますよ。

 


 2012年から2013年にかけての冬は、福井県から石川県の浜辺で、おびただしい数のアカウミガメ幼体が打ちあがりました。その数はおよそ70個体にものぼり、漂着時季が遅れるにつれ、漂着個体のサイズも大きくなり、夏に生まれたアカウミガメが漂着していることが分かってきました。

 多くのウミガメは博物館などで保管してもらいましたが、じっくり観察したくてスケッチをすることもできました。こんなに小さなうちから付着生物のサラフジツボや、コスジエボシが付着していました。海のヒッチハイカーは、こんなにたくさんいるのですね。

アオウミガメ  Chelonia mydas

 

  アオウミガメは小笠原や南西諸島を産卵地にする、南方系のウミガメです。

 中部地方でも時折漂着しますが、いつも見慣れているアカウミガメと比べ ると頭がやけに小さく感じます。 また骨になってもその違いは大きく、骨が全般的に華奢(きゃしゃ)なのです。ですから、同じパーツをアカウミガメと比べても薄いイメー ジが強いですね。

 南の島で食用にされるのはアオウミガメですね。


オサガメ  

Dermochelys coriacea 

オサガメは硬い甲羅の無いウミガメです。さて、オレが見たオサガメは浜辺に腹面を見せていました。キールのある背中を見ようと、がんばりましたが重くて動きませんでした。オサガメの嘴(くちばし)はW型です。


タイマイ  Eretmochelys imbricata

 

 タイマイは、鼈甲をとることで知られたウミガメです。ギターを弾くときのピックには硬いタイマイの鼈甲が最適と言われていますので、これを見つけたときには「やった~!」って思いましたよ。でも、何やら難しい条例があるようなので、海浜センターへ連絡となりました。

 タイマイ=鼈甲のことしか頭に無かったのですが、ひっくり返したら腹の色の艶めかしいことにビックリ!こんなにキレイでしたよ。


ヒメウミガメ  Lepidochelys olivacea

 

 2011年12月23日、福井県美浜町でビーチコーミングの最中に、仰向けになった大きなカメを見つけました。いつも見ているアカウミガメなどに比べて背甲がヘルメットのように丸く、甲羅の縦横バランスが甲長=甲幅と同じなので、「これってもしかして・・・日本では珍しいヒメウミガメ!」早速ウミガメ協議会に連絡しましたので、解剖して持ち帰ってくれたようです。 これを見つけたので、ウミガメの漂着は5種類確認できました。(笑)

タイ科  Sparidae

 

 ビーチコーミングをしていると、浜辺に打ち上げられた小魚に混じって、驚くほどキレイに肉や皮膚、内臓が無くなった白骨状態の骨格をみたことがありませんか?

 こうした骨格標本を作ったのは、浜に棲むハマトビムシたち。

 種の特定まではたどり着きませんでしたが、美しいタイ科の標本です。

バショウカジキ  Istiophorus platypterus

 

 バショウカジキは、カジキの仲間で、背びれの目立つ嘴が非常に長く尖った魚です。北陸ではビョウブサシとも言われています。

 この骨は、椎体ですが、前後に上下に突起が目立ち、それらが重なると、胴体はほとんど曲がらないように思われます。そうなると、芭蕉の葉を広げたような巨大な背びれが、方向転換などでは役に立つのでしょうね。

 

ハリセンボン  Diodon holocanthus

 

 フグの仲間のハリセンボンは、フグ同様に体を膨らませることができます。そのときハリセンボンは体表にある逆T字型の針を立ててこんなポーズをとることができます。

 また、ハリセンボンは沖縄などでアバサーと呼ばれ食材にもなりますが、多くは死滅回遊で北上します。日本海では時折大量漂着があり、そんな時には低潮線にずら~っとハリセンボンがつながります。

ウスバハギ  Masturus lanceolatus

 

 福井県沿岸では冬場に漂着するフグの仲間です。

 名前の通り、カワハギの仲間なので、硬い皮はきれいに剥がすことができます。またサイズが大きく、50cm以上の個体が多いので、1~2匹拾えば、鍋にバッチリ!白身は淡白で、クセも無い・・・と言うより無さすぎなので、キモを好みに応じて入れてやればOKですね。(笑)

アミモンガラ  Canthidermis maculata

 

 福井県沿岸では冬場に漂着するフグの仲間です。

 名前の通りカワハギの仲間で、網目のあるモンガラカワハギとして付けられた名前でしょう。硬い皮はきれいに剥がすことができます。またサイズは大きくないが大量に撃ちあがる個体が多いので、5匹も拾えば、鍋にバッチリ!白身は淡白で、クセもありません。オレはウスバハギよりこっちが好き!  調理法はこっちで見られます。

ヒラソウダガツオ  Auxis thazard


 沿岸性のソウダガツオで、身体がマルソウダガツオほど丸っこくないので、ヒラソウダと言われます。

 渥美半島では、イルカの仲間や、サメの仲間などに追われた固体が逃げることができず漂着することがありました。大きさは40cmほどでした。


ヤリマンボウ  Masturus lanceolatus

 

 福井県沿岸では冬場に時折フグの仲間のマンボウが漂着します。

 最初はただのマンボウかと思っていましたが、尻尾の先が少しとんがり、ヤリマンボウだったようです。

 ビーチコーミングを始めたころはまさかマンボウの漂着を見るなどとは思いませんでしたが、若狭地方ではそんなに珍しいモノではありません。皮膚も硬いようで、カラスも敬遠気味でした。

サメやカスベの卵嚢


 サメやカスベは一つのケースの中に命を宿し、そのケースに守られて長い時間をかけて大きくなります。

 左はナヌカザメ Cephaloscyllium umbratile

 右はカスベ類(ガンギエイ科 Rajidae)


アカシュモクザメ  Sphyrna lewini

 

  渥美半島の表浜では、時折シュモクザメの漂着があります。あまり生々しいものは大変なので見るだけにしていました。でも、1mほどのミイラがあったので車に積んできましたが、やっぱ臭い!(笑)一月ほど寒乾ししましたが、しっかり臭うので頭部だけ標本にしました。

 英語ではハマーヘッドと呼ばれる特徴的な頭部は、さすがにカッコいいですね。写真では上あごと一緒になっていますが、煮れば外れました。

カマイルカ  Lagenorhynchus obliquidens

 

  福井県の浜辺では時折、イルカのストランディングに出会うことがあります。これはある年のエープリルフール!4月1日のことだったのでよく覚えていますが、何かに衝突したのか、目のあたりに血がにじんでいました。

 背びれの形が鎌に似ているということで名づけられた和名です。

 水族館のイルカショーに登場するカマイルカが、こうして浜辺に打ち上げられているのには驚きました。

カマイルカの骨   

 普段見られない骨などが見られたときには、観察とともにスケッチを残すようにしています。上のイラストは第一頸椎から続くもので、実際に手に取ることで、第一頸椎と第二頚椎は癒着していることや骨の組み合わせを理解することができました。

耳骨 


 見通しのよくない海中では、クジラやイルカの視覚や嗅覚は非常に低下しています。そんな中で聴覚は非常に発達しました。聴覚の発達したクジラには耳骨があり、それは鼓室胞(こしつほう)と耳周骨(じしゅうこつ)からなります。写真は左が鼓室胞、右が耳周骨で、房総半島では化石化したものを拾うことができ、それをアクセサリーにしている人もいます。

 写真はスナメリ・Neophocaena phocaenoidesの耳骨です。

スナメリ  Neophocaena phocaenoides 

 

 スナメリは背びれの無いのが特徴で、他のイルカのように背びれを出して泳いでいるところは見られません。愛知県では三河湾でスナメリの繁殖が確認されています。そして伊勢湾、三河湾、それに渥美半島の表浜でもスナメリを見ることができます。オレは三河湾内の仁崎辺りで泳いでいるのをみています。また渥美半島や知多半島の浜辺では、漂着した個体を見ることも珍しくありません。

ニホンジカ 鹿の角 Cervus nippon


 近年、本州においてはシカの数が増えています。早朝に林道を走っていたりすると見かけたり、夜はライトに赤い目が光ることが多くなりました。

 福井県でも状況は同じで、毎年落ちるシカの角が浜辺に漂着します。これは山で落ちた角が、出水などで沢に流され、河川を通して海まで届けられ、流木などと一緒に打ち上げラインに転がっています。写真はその年に落ちた新鮮な角ですが、エージングして短くなったものも見つかります。

ニホンザル Macaca fuscata


 近年、ニホンザルはあちこちで見るようになりました。

 福井県では、特に若狭地方に多く、美浜町、若狭町では、ビーチコーミングに訪れると、7割ほどの確立で出会うことがあります。特にニホンザルは昼間も行動しているので、道路わきの木の上や、田畑での目撃も多いのです。この写真は、美浜町の浜で別々に見つけた頭骨と下あごです。もちろん同一個体ではなく、下あごの方が大きめです。(笑)

イノシシ  Sus scrofa


 最近では数が増加して、田舎ではホント困っていると言うイノシシ、福井ではその骨や死体が頻繁に浜に打ち上げられています。小さな瓜坊と呼ばれる子供から、巨大な大人までよく見かけます。大人のイノシシ、下あごの牙は三日月型で立派です。


ウミスズメ Synthliboramphus antiquus

 

 ビーチコーミングをしていると、時折鳥の漂着を見かけます。それも普段は見ることの少ない海鳥が多いのです。

 ウミスズメは環境省の絶滅危惧ⅠAに選ばれたウミスズメ科の海鳥です。北の海洋に分布するウミスズメは、秋から冬にかけて中部地方沿岸にやってくるので、大荒れの後などに漂着します。海鳥の落鳥を手にしていつも思うのは、胸の羽毛の密度が高いこと、陸の鳥との比ではありません。

ハジロカイツブリ Podiceps nigricollis

 

 バードウォッチングをしていた頃、ハジロカイツブリは近くの池で見ていた鳥でした。毎年冬に現れ、白黒の羽毛に真っ赤な目玉がかわいい印象の鳥でした。

 いつもプロミナの遠くにいた鳥が、ビーチコーミングで手に触れられる状態で出会えると、ワクワクします。このときもます瞳の色を確かめました。暗赤色と。嘴が上に反ったのを確認しちゃいました。

ハシボソミズナギドリ Puffinus tenuirostris

 

 ハシボソミズナギドリはタスマニアなどで夏(日本の冬)に繁殖し、春先に北上し、初夏頃にかけて日本近海にやってきます。こうした飛行距離は一年で3万キロを超すとも言われ、若鳥が餌をとれずに衰弱して打ち上げられることがあります。

 愛知県渥美半島の表浜では大量漂着する年があり、そんな時には1キロの汀線に30~100羽もの鳥が打ち上げられることもあります。

ハイイロミズナギドリ Puffinus griseus

 

 ハイイロミズナギドリは、ハシボソミズナギドリ同様に、タスマニアなどで夏(日本の冬)に繁殖し、春先に北上し、初夏頃にかけて日本近海にやってきます。こうした飛行距離は一年で3万キロを超すとも言われ、若鳥が餌をとれずに衰弱して打ち上げられることがあります。

 愛知県渥美半島の表浜ではハシボソミズナギドリとともに漂着する年があります。ハシボソミズナギドリ(34cm)に似ていますが、二まわりほど大きい(43cm

)ものでです。

海鳥の頭骨

 

 ビーチコーミングをしていると、海鳥の死体に出会う機会が多いのです。 見ていただけの鳥ではなく手にとることができると、観察が深まります。

上の骨はコアホウドリ Diomedea immutabilis

 かなり大きくて全長180mmほど、嘴の鞘も残っていました。

下の骨はウミウ Phalacrocorax capillatus

 ウの仲間には頭部の後ろに特徴的な外れる突起があります。

コアホウドリ

 Diomedea immutabilis

 

 海が荒れた後に漂着するようです。渥美半島ではこれまでに6回以上漂着を確認しています。2015年8月31日には、愛知県田原市で一日で2羽のコアホウドリの漂着を確認しました。翼開長2mほどの個体を2羽回収しましたが、4キロ弱の荷物を運ぶのは大変でした。


●ビーチコーミングを続けていると、珍しい海鳥や動物の死体に出会うことはまれではありません。オレには手の負えないモノがほとんどなので、そんな死体は、友人を通して福井市自然史博物館、豊橋市自然史博物館、大阪市立自然史博物館、岐阜県立博物館へ渡したり、連絡をして、標本として収蔵してもらってます。